サン・トワ・マミー/ホロウ・シカエルボク
 
ではないのよ」ときみは右の眉を吊り上げた、「そういう話をしているわけではない」そんなフレーズは卑怯過ぎるとおれは思ったけれどもう言わなかった、女という生きものの主張はハナから、どちらが正しいとか間違っているなんて観点とはまるで違うところから発せられているのだ、おそらくは諦めではない、しいて言えばこれは一番小さな異世界の認識だ…漂流者だって必ず船を降りてみたい時が来る、おれは本を置いて洗面で歯を磨き、顔を洗い、シャツとパンツだけになってベッドに入った、この部屋にはシングルのベッドがふたつ、離れた場所に置かれている、その気があればどちらかがどちらかに潜り込むし、なければそのまま眠る、これはお互いに希望
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