視破線/ただのみきや
翡翠の鎖骨のために
香水をインクにして一枚の遺言を書き残した
それは夜明けのテントの青い煙が絡みついた
柔らかいトルソと群がる狼の行方を記したソネット
赤い涎の封印から生えた舌がひとつの眼で
あらゆる時の方位角を見張っていた
いよいよ顔が寓意を漲らせ迫った瞬間
時計は自ら留め金を外して瓦解した
無数の論理は足を失くし歯車は死者の口角で
虹色の断片を凍ったパン屑みたいに撒き散らした
下腹部では一つの薔薇の蕾が漲っては次々と開き
わたしたちの餓えは限界を超え ついに
世界を内側から咬んでパンクさせてしまう
知覚しうる全てのものがその知覚をも含め
何一つ知覚し得ない未
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