視破線/ただのみきや
 
みが今ひとつの顔となって追いかけて来る
――予てより聞かされていた復讐者
わたしたちは黒い釜で古釘と砂を炒って
ゆらめく大気の中で音と心の糊付けを剥がし
淡い痛点を針先で探る遊びに没頭しながらも
素足の少年少女さながら軽やかに美醜を嗅ぎ分け
火の蛇を寝かしつけた地母神のたゆたう白髪に
リキュールの雨で波紋を開けながら逃げ続けた


顔が迫って来る
入り乱れたカラスの無関心とテグスの縺れた時間は
境のないカンバスをこさえてわたしたちを物語る
おまえは抽斗(ひきだし)の翼の重みに耐えかねて
肉体を絵具のように微睡みの中に溶かしてしまう
時計の背中に隠された冷たい翡翠
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