空論のカップに口を付ける冬の横顔/ただのみきや
 
まとっている

  骨肉の優美な屈折から
  溶け出した乳白の海
  訪れる者などなく
  髪の毛で首を吊ったラプンツェル

平和とオリーブ
漆黒の夜に突かれ突かれ
肉叢をゆらし 生は
あてどなく死の圏を巡る





時間?

卵から空気が孵る
殻の内側にはたくさんの
殴り書きの文字

かつてわたしたちは
上手に時間を混ぜ返していた
風呂のお湯を揉むように
中華鍋で炒飯を振るように

対象よりも先に思考は老いる
ひと時咲いて散る花のよう

なにもかも解説して批評して
あの輪廻のような
驚きも発見も忘れ果てて





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