詩の日めくり 二〇一四年七月一日─三十一日/田中宏輔
 
一つ、宙に浮かんでいる

卵は
湖面に映った自分と瓜二つの卵に見とれて
動けなくなっている

湖面は
卵の美しさに打ち震えている
一個なのに二個である

あらゆるものが
一つなのに二つである

湖面が分裂するたびに
卵の数が増殖していく

二個から四個に
四個から八個に
八個から十六個に

卵は
自分と瓜二つの卵に見とれて
動けなくなっている

無数の湖面が
卵の美しさに打ち震えている

どの湖の上にも
卵が一つ、宙に浮かんでいる

二〇一四年七月十四日 「フンドシと犬」

フンドシをしていない
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