詩の日めくり 二〇一四年七月一日─三十一日/田中宏輔
 

猿をとじるベンチをとじる舌をとじる指をとじる庭をとじる顔をとじる部屋をとじる地図をとじる幸福をとじる音楽をとじる間違いをとじる虚無をとじる数式をとじる偶然をとじる歌をとじる海岸をとじる意識をとじる靴をとじる事実をとじる窓をとじる疑問をとじる花粉。

二〇一四年七月九日 「思い出せない悪夢」

 けさ、自分のうなり声で目が覚めたのだけれど、そのあとすぐに、隣に住んでいる人が、「どうしたんですか?」とドア越しに声をかけてくださったのだけれど、恥ずかしくて、返事もできなかった。なぜ、うなり声を出しつづけていたのか不明である。怖い夢を見ていたのだろうけれど、まったく思い出せない。

二〇一四
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