羊たちの烙印/ホロウ・シカエルボク
のを信用しなかった、頭の中にはいつも疑問符が蝶みたいにひらひらと飛び交っていた、昼となく夜となく、俺はそいつらを捕まえては問いかけ続けていた、それはひとつひとつの、些細な疑問のような顔をしていたけれど本当はそうでないこともおぼろげに理解していた、けれどもちろん、解答など存在しないのだということを理解するまでにはある程度時間を要したけれどーようやく車が途切れたので横断歩道を渡る、駅の方角からアルコールに憑依された暇人が叫んでいるのが聞こえる、あいつは日常において、そうして時間をやり過ごすしか術がないのだろう、その声はじきに聞こえなくなる、俺は横断歩道を渡り切り、またぼんやりとした車の流れが戻ってくる
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