フロントガラスにちいさな蝶が止まった/ただのみきや
 
うに拷問されていた
左利きの誰かの右手が時計の文字盤と交尾しながら
壁画の中で出口を探していたがあっという間に
野生馬の群れが炎で辺りを洪水にした
水瓶座で喉を潤す男は皮肉の女神の息子たちに捕らえられ
十字文様のある蜂に卵を産み付けられる
卵は時限爆弾であり隠喩であり在りもしない人生の思い出の
渚で拾った指輪をはめた薬指ですらあったが
わたしにとっては性欲を閉じ込めたカプセル薬でしかなかった
一個の肉体に幽閉されている
女はペッパーミルを回す香りを愛し
夕陽を乗せた湖から心中したカップルを幾組も呼び戻していた
彼らは皆アダムとエバになってサラダの中で愛し合っていた
窓から
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