フロントガラスにちいさな蝶が止まった/ただのみきや
 
餌をやったり
暇と哀愁を持て余し
滑稽な恰好で
苦虫をかみつぶしたように笑う
いま行こうとする死と
いま出ようとする生を
間から交互に見やる
拳銃の響きの刹那のような
最終行を探している





終日

背中に属さない盃にガーネットをあてがって
朝の光の暗い闇
眼球とヤスリは互いに相手をその身に乗せ
言葉を発する前の舌はぬめぬめと蠢いていた
食卓にはシナモンの風が吹いていたが
蝸牛がティーカップを這い回ることは拒めない
心臓には呪文めかした草木が描かれて
掘り出したばかりの縄文式土器だった
わたしは蒼白な糸の縺れで
毛羽立ったまま嬉しそうに
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