19歳の不安/七尾きよし
 
で俺を抱きしめてて・・・・・・・・・。 お願い。君を愛してる。何の疑いもなく・・・・・・・・・・・・なんで死ななきゃいけないんだ。俺だけ 一人ぼっちで・・・・・・・・・・・・・・・」

 男の声は最初から何も存在しなかったかのように消える。 男の声が空間に残した余韻さえもはやないのだ。 彼が何を求め何を訴えたかったのかは分からない。 誰にも知る由のないことだ。
 しばらくの沈黙ののちに再び老人がのどをふるわすように声を発する。 またもそのしわがれ細った声は瞬時に姿を消す。
「不安とは…・・・」
 続いてやはり男と女の声がし、再び繰り返す。

「青白い顔をした男がにやりと笑って手まねき
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