早贄/ただのみきや
わたしは
眼孔の窪み 円やかな陰
ハンカチ
風の後の草いきれ
白粉の匂い
見つけられない姉の仕草
オニユリに絡みつくカラスアゲハ
低く屈んで弄る指先
死者をいっぱいに吸い込んだ夏
立眩む どこかで月が
恥じるように白い
酔い朝
時間が暮れて往く
わたしは怠惰を名残り惜しむ
ああウィスキーが明けて往く
琥珀の夢が透けて往く
ささやかな死 そして
望まない復活
砂を失くした砂時計と酒の空ビンが
朝に迎えの車を待っている
分別をわきまえない二人は
いつまで
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