早贄/ただのみきや
までも回収してもらえない
溶ける日時計
山の緑で目を洗い遠い海の雨を想う
靄の中で鴎が独楽のように傾いて
(円周率のようなもの わたしは
睨(ね)め付ける太陽に項をくれてやる
夏の文字盤は螺旋
わたしの影で刻々と蟻は狂った秒針
へそのない子
ノラニンジンの白い花で
縞模様のカメムシが交尾している
祖父の瑪瑙のカフスボタン
モノクロの遺影から滴る血
白磁で受け止めた
見知らぬ母の二の腕のほくろ
雨の斜線で蒼く涸らしたペン
ささくれのない赤子の手に握らせて
ノラニンジンの花がどこまでも
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