早贄/ただのみきや
 
までも回収してもらえない





溶ける日時計

山の緑で目を洗い遠い海の雨を想う
靄の中で鴎が独楽のように傾いて
(円周率のようなもの わたしは
睨(ね)め付ける太陽に項をくれてやる
夏の文字盤は螺旋
わたしの影で刻々と蟻は狂った秒針





へそのない子

ノラニンジンの白い花で
縞模様のカメムシが交尾している

祖父の瑪瑙のカフスボタン
モノクロの遺影から滴る血

白磁で受け止めた
見知らぬ母の二の腕のほくろ

雨の斜線で蒼く涸らしたペン
ささくれのない赤子の手に握らせて

ノラニンジンの花がどこまでも
[次のページ]
戻る   Point(4)