新たな起点/ただのみきや
 
たき
いつ終わるとも知れない雲雀のさえずり
陽射しを頭に浴びながら
懐かしさが沸々
記憶の故郷を取り出して
母の乳房をまさぐるように 半眼で
外界と内界を重ね見ながら

故郷 それは持ち歩くもの

「捨てた」「忘れた」は
無意識へ沈めただけのこと
夢も出来事を粗材にした内的現象
人生を形成する一側面
少しずつ夢の色味は記憶に染みて往く
年月を経て神々しいまでに

死ぬと故郷へ帰って往く 
そんな話を聞いたことがある
死の寸前 その刹那
コンマ一秒が引き伸ばされて
夢も現も区別なく記憶の蔵が一挙に開き
懐かしさが迸り 記憶がからだを持って
ずっと満たされ
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