新たな起点/ただのみきや
されなかったものが今や満ち満ちて
太陽のように輪郭のない光に包まれ眩みながら
意識は溶け去るように消滅する
そんなことが あるのかないのか
時が来るまでわかりはしない
故郷 それは創り上げるもの
「人はどこから来てどこへ往くのか」 そんな問いに
聖書やコーランの説く
唯一絶対の神を信じたくないのなら
「人は混沌から来て混沌へ帰る」 そう答えたら良い
人は故郷を創るために生まれて来て
生涯かけて来た場所と帰る場所を創造(あるいは捏造)する
「――ああ懐かしい故郷
麗しい故郷
いまわたしは帰ろう 」
自分を産んだものを孕み
自分が産んだものの胎へ
還って往く
ウロボロスのように
故郷 それは未完の楽園
夢と現実のどちらで齧ったかわからない
銀河で遺失した一個の林檎
わすれられない 思い出せない味
《2020年7月4日》
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