帰郷/ただのみきや
って来る。
それを捕まえようと虫取り網を持って出かけてずぶ濡れになっ
たものだ。僕のことを母親は「きょげんへき」とか「もうそ
うへき」とか誰かれ構わずこぼしていた。僕は頭や心に浮か
んだ面白いことを素直に言葉にしただけで時にそれに従って
行動さえしていたが、ごっこ遊びというより見えない手や聞
えない声にサワサワ撫でられ誘われているようで別段芝居を
しているという訳でもなかった。でも回りの子供たちもそう
変わらなかった気がする。子供たちは時限爆弾を仕掛けられ
たままそれと気づかず楽しげに駆けて往くもので、夏にはア
イスキャンデーを膝に垂らしながら自転車をこいで埃と陽炎
に捲かれ
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