201912第二週詩編/ただのみきや
 
る獣

夢が終わりから始まるように
書き出しを探している
この雲すべて搾り尽くすまで
乾いた白紙に辿り着くことはない

河を流れる少女
約束された祝福がいつまでも
追いつくことのないまま
歌になって 海へ溶けた

聞こえない千々の囁きを
指の欠けた手でかき集め小瓶に入れる者

昼は光に透かし見て
夜はパイプに燻らせて
なにを想ったか遺書の中を歩き回る

同じようなことは繰り返し起こるが
同じことは二度起こらない

なにかに誘われる
なにかは自分
やわらかな雨をくぐり
航跡を引くように香水を匂わせる獣



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目が慣れると

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