碧い鴉の赤い十字架/アラガイs
並んだ車のプレートを見た。
風にチラシが舞う街の四辻を直角に折れる。
よれよれの碧いコートを羽織り、いつものように救護施設に立ち寄った午後、ポケットから小銭を取り出してみた。小銭入れだけで充分だった。
開けっ放しの戸口を入れば、どこかで見覚えのある女性がテキパキと配食のボランティアをしていた。
縁取りのある眼鏡をかけてはいたが、長めの髪を束ねた、あの赤いジャージ姿の少女だった。俯きに何度も見あげ確認した。
きれいに折り目のついた白衣は仕事帰りなのか、どこかの女医か学士なのか、気品も漂う身なりだ。
どうしようか。迷ったあげくにわたしは少女の眼の前で立ち止まっていた。
(やあ、久しぶりだ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)