かぎ編針で刺す/田中修子
ったのを思いだした。あなたの首をあたたかくしましょう。(愛で縛ってはいませんか いえ あい とは そも あいはん する あいぞう -では、いや まっすぐに、注ぎたい、雨あがりのように そのにおいのように)
編みながら思いだしたわ、小鳥がいた、ところなんです。あたたかな真珠色のころんころんとする浜辺に、銀のつめたい雪はふるふるみどりに、しずかなフクロウの啼き声は耳の裏側。なつかしいかしら-覚えて、いる?
少しずつ思いだしたの。サランラップがきらめく薄うい、宝石にしなだれ落ちていたころのことを。どこまでも、どこまでも、くるくると引いて-あって
ただ名前もなく文字もなく、そこにあった。名付
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