ある鋏の使い方/愛心
を想像して欲しい。
人の体にはそんな光るブレスレットを長く伸ばしたようなものが沢山巻き付いている。
縁はいつでも宙に浮いていて、その人を守るように揺蕩っているときもあれば、その人を縛りあげるようにとぐろを巻いているときもある。
最近見た良くない縁は、彼女の縁だった。
職場の人間関係で苦労しているらしく、苦手な人がいて、どうしても良く思えないと言っていた。
一番年若い自分にばかり手厳しく当たり、他に人がいるときは優しいが、二人きりになると、あからさまに態度が変わると言う。
仕事が出来ない自分が悪い、と苦笑する彼女の首筋にはどす黒く光る毛糸ほどの太さの縁が巻き付いていた。彼女の首筋の縁はど
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