This is a pen/やまうちあつし
とに帰った
灰色一色になっていた
ペンのインクも黒色に戻った
それからのち
わら半紙に書かれたものは
いったい何だったろう
言葉はひっくり返り
あるいは肩を組み
時には火花を散らし
書いた本人に牙をむく
殴り書くそばから
線で塗りつぶされ
丸まって転がった
あるとき
どこからか
比喩が現れた
ふらり、とちょっと寄っただけ
とでもいうように
言葉が
街のように定着する
黒いインクがとめどない
その人は丁寧に
一晩かけて清書した
頁の中に
港があり
公園があり
墓場があった
屋根を持つ人がおり
屋根を持たない人がいた
大地は
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