村の記憶/帆場蔵人
 
込んで
寂しい痛みがちかちかする
肉の削げた足をさぐると酷く冷たい

あぁ、これかな

やがて叫びが途絶えるころ
指に滲んだ血を舌でぬぐう
祖父は黙ってぼくを、いやぼくの
背後のなにかをみつめている
ぼくも黙って変化する川面のような
瞳をみつめていた

じいちゃんの手づくりの竿と針を
川に流して、きっと怒られると
歯を噛みしめていたけど、じいちゃんは縁側に座ると
ぼくを隣に座らせて、村の田畑を
指さした

「あのさき、山の口のあたりな。じいちゃんがおめぇ、ぐらいのときはなぁんもなかった。じいちゃんの父ちゃんやおじさんや姉ちゃんたちが、時間かけて拡げた。その前は
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