最後の砦/悠詩
 

正しいことをしてきたわけでもないのに
その浸食に身を任せていたかった
ここにいることの理由が見つからないなら
その濁流に飲み込まれていたかった





雨は続く
丘を走る水は奔流へと姿を変える





戦士は体を起こした
息苦しかったために
ただ
それだけのために
水ではない空気が吸いたかった
ただ
それだけのために






瓦解した砦には
かつて命が住まっていた


神が示したこの世界は
恐らくこれからも
命が住まう世界だ






だから守ろうとした
この体をくれた両親を

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