最後の砦/悠詩
正しいことをしてきたわけでもないのに
その浸食に身を任せていたかった
ここにいることの理由が見つからないなら
その濁流に飲み込まれていたかった
雨は続く
丘を走る水は奔流へと姿を変える
戦士は体を起こした
息苦しかったために
ただ
それだけのために
水ではない空気が吸いたかった
ただ
それだけのために
瓦解した砦には
かつて命が住まっていた
神が示したこの世界は
恐らくこれからも
命が住まう世界だ
だから守ろうとした
この体をくれた両親を
だ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)