最後の砦/悠詩
あるのは
瓦解し蹂躙し尽くされた砦の姿
その中にただひとつのみ
傾いでいたポールに旗が力なく垂れ下がっていた
戦士は膝を突いた
自らを勇者と託けていた時には
守れることを信じていた
前に進めば
時の流れは跡から附いてくると信じていた
事実は信じていたことと違う
砦はただそれだけのことを示していた
空を雲が覆い激しい雨が降る
雲間から光が迸り
神は砦の傾いだ旗に雷を落とす
これがお前の世界だと言わんばかりに
戦士は硬い大地に横たわる
地を淋漓と流れる水にまみれて
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)