街/AB(なかほど)
ない。
雨細工
土の匂いがしてくるとどこか懐かしい気持
ちになり、ああ、もうすぐ落ちてくるんだろ
うな、と思いつつ、風邪をひきやすかったこ
とも忘れて濡れようかどうしようか。結局、
しっとりとするころに石の階段を登って帰る。
やがて音に変わると、胸が痛くなることも
その都度に忘れて、濡れたくなくてという事
でもないのに
ざあ
という音にはいたたまれなくなって走る。
ざあ
こんなふうにいつまで経っても不器用です。
ざあ
と、雨ばかりの似合うこの街も、不器用です
がとても綺麗です。
ざ
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