アメジスト/やまうちあつし
つながっている
わけでもないのに
男は言う
「私はこの石と数十年を共にして
毎日石の中に降る雨を眺めてきた
いつしか雨は
私の中でも降り注ぐようになった
私の命が尽きるまで
雨は降り続くだろう
今の私は雨を盛る
器にすぎない」
「人は一生の間に
なにもかもなげうって
手に入れたいものと出会ってしまうときがある
あるいは私は
一生を棒に振ったのかも知れないが
それとて同じ人生だ
君もいつの日か
そんなものが見つかるかも知れない
その時が来るまで
この石を持っているといい
君の代わりに
この石はいつでも
雨を降
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