赤目の夏/為平 澪
 
ー服に、舌打ちを繰
り返す。ほんの少しの隙間ができるとボヤがおこり、発火する炎を目は
映し続けた。目の前の大きな咳払いは、この夏の終着駅まで続くだろう、
と思うと、赤目は殺意を抱いた。新聞で隠された口元の企みを、上目使
いで見抜く、また、充血した朝の日。

赤目が黙々とそれぞれの殺人計画を目に宿す頃、また、新しい赤目が飲み
込まれ詰められ、揺れ動いて何かがぶつかって、ひび割れる。パックされ
た、一発触発の肉弾戦の中で、誰の目に窓の外の景色が見えていただろう。
誰の目に朝日があっただろうか。

人と人との間に流れる血は冷房されたまま、どんどん無言になり、共通の
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