夏、弾丸高気圧、殺人/北街かな
 
じりじりじりと動かして、

太陽がだいぶ行ってしまったころには深くて重たいカタマリもずいぶんとうんざりとした様子だった。
形を覚えていることすら投げ出してしまったようだ。
溶けもせず、透明にもならずに、
また鳴らない拳銃が夕方とともに蒸発してゆく、ああ、
手にしたこともない凶器が聴いたことのない銃声を夢想して、
さいきんは夏になるたびに毎日死んでいる。
底なしの棚のうえに横たわり、
あたらしい後悔にぴかぴかのくろい帯と虹色のカバーをかけて、背表紙を丹念に押し込んで、隙間に丁寧におさめて、
また死んでいる。
太陽が昇るたびにぜんぶ白くなって音もなにもしなくなるから、
私の首筋
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