創作童話詩/水菜
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『林檎の匂い』
僕の目の前に、林檎はあります。
僕は、その甘えて腐ってしまったような腐臭を嗅ぎます。
僕は、その林檎を、あまやかし過ぎてしまったから。
僕は、その林檎が、可愛くって、切なくって、そうして、とても、やるせなかったから。
僕は、その林檎を、捧げもちます。
甘えた腐臭をこぼした、その林檎は、まるで、僕に甘えているようで、
僕は、思わず困った顔をするのです。
その甘えて腐ってしまった僕の可愛い林檎に見せつけるように。
嗚呼、僕の林檎は、転げてしまった。
あの切ない夢の奥へ。
ねえ、お願いだ、僕の林檎を、踏み潰
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