しろいまぼろし/水菜
音が響いていて、それが、私でも知っているアニメのテーマソングだと私はわかった
「○○○、帰ったぞ〜 手伝ってくれ」
私は、玄関の上り口に腰を下ろすと、なにか大事なことばを言い、手元に持っていた小さな犬かごをそこに置いた
歓声とともに、ちいさな足音がして、私は、ふっと目元をやわらげる
私が、瞬いたとき、そこは一面、白に覆われていた
空ですら、白い吹雪に包まれていて
目に見える木々やわずかに見える草でさえも、白く包まれていた
ジンと指先が悲鳴をあげた気がする
キーンと耳元でなにかが歪み始め
ごつい登山靴を持ち上げる足はふわふわ浮いているような気がして心許ない
し
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