しろいまぼろし/水菜
 

しろいまぼろしだと思った

ふっと目線をずらした時、目に飛び込んできたのはしろい影だった
耳元で響いた声が、私の動かなかった心を揺らす

はっとした私は、しろい影がみえた辺りにある雪のふきだまりに向かってすすむ
手馴れた身体がシェルターをつくりあげていく
感覚をどこかにおいていても、命を守るために身体は動くものなのかと働かない頭で自嘲するように思う
雪のふきだまりを押し固め、風の向きとは反対に入口を作るため心持ち低く、ほりすすめ奥にすすむにつれて高くする
外から換気用の穴をあけ、床に溝をほる

落ち着いたときには、私は、シェルターの奥に蹲るようにして座っていた

奥の方にしろい太陽が上がっているのがみえた
しろい狼だとなぜか思う
狼の目は水色をしている

しろいまぼろしが私を覆う

みずみずしい狼の声がしたような気がした





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