しろいまぼろし/水菜
ている物体
柴犬らしきくるりとまわった尻尾が見えた
「ジロ!もう、ばかだなあ」
ジロと呼ばれたその柴犬は、飼い主らしき少年に笑いながら雪を払われ
少年の水色の手袋に覆われたちいさな手に鼻を擦り付ける
「ワンっ」
思いのほか、若い犬らしきみずみずしい響きの鳴き声を耳にし、ふっと既視感に襲われた
私は、首をすくめたようにして、そういったものを頭から無理やり追い払おうとする
雪の白は苦手だった
私は、もともと白い色は苦手だ
若い時分から、なんとなく避けてきた
それが何故なのか、自分でもわからない
否、正確に表現するのなら、考えないようにしていた
底冷えのするなに
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