灰の肖像/ハァモニィベル
 
捉へることができるやう
  に思はれた。・・・》

だけど、

 《苛苛(いらいら)した執念の焦燥が、その時以来憑(つ)きまとつて絶えず私を苦しくした。
  家に居る時も、外に居る時も、不断に私は〔…〕
  この詰らない、解りきつた言葉の〔…〕、或る神秘なイメ−ヂの謎を》

気づいた時にはもう追い始めているのだ。

 《その憑き物のやうな言葉は、いつも私の耳元で囁いて居た。悪いことに
  はまた、それには強い韻律的の調子があり、一度おぼえた詩語のやうに、
  意地わるく忘れることができないのだ。「テツ、キン、コン」と、それは
  三シラブルの押韻をし、最後に
[次のページ]
戻る   Point(2)