灰の肖像/ハァモニィベル
件である。
これは、もう迷宮入りしたのか?
「私」を疲れさせたものとは
何か? 靴を破れさせたものは
何か?
「私」とは? 「おまへ」とは? 誰か?……
犯人はまだ生きているのではないか?
(疲れて、破れた)
それでも、
「手」だけは、
まるで他人のモノの様に
(物悲しく、息づいてゐる)のだ
(「青蟲(むし)」のように吹かれながら)
(青蟲のように・・・)
床の上に、
事件は、もう一つ落ちていた
――「虫」だ。
《或る詰らない何かの言葉が、時としては毛虫のやうに、脳裏の中に
意地わるくこびりついて、それの意味が
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