バラナシにて ?/狸亭
流れは強く激しく
木の葉の舟はひたすらガートのある河岸に沿って辛うじて遡る
老船長の瞼の中の眼差しはひたすら流れを見つめている
精悍な少年の黒い裸体に汗が光る
老人の指図に従い緩い流れを選んで行く
岸辺の寺院やガートに溢れる人々の祈りの声がガンジスの河面に消える
赤い衣からはみ出して膨れあがった死体が
目の前を浮きつ沈みつ流れて行く
太陽が昇り河や建物や人々の群れが一斉に新しい光に溢れる
力尽きた小舟が流れに沿って河を下り始める
遥か下流の彼方に死体を焼く白い煙がたなびいて行く
行き交う舟と舟の間をまた一つ黒い包が流れている
どうやら新しい子供の死体らしく鴉
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