バラナシにて ?/狸亭
 
く鴉が一羽啄ばんでいる
バラナシのガンジスは三〇〇〇年の時間を呑込み流れている
老船長と少年は先祖代代小舟を操っていると言う

船長の名はケダルナート五二歳
少年の名はパブー一八歳
伯父と甥

船着場から岸に上がると癩者の群れが待っている
崩れた顔 溶けかかった手 消えた脚
黒い太陽の下で異様な臭いが蒸れ 旅行者は立往生

物売りの声 走り回る子供たち
悠然と座り込んで髭の手入れに余念の無い聖者
西洋からやって来たヒッピー

人込みに混じり大きな牛が歩いている
人力車が行き 凹んだタクシーや傾いたバスが走る
埃が舞い上がりバラナシの朝が始る。


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