【プレ批評対象作品】あほん『釣り人』 について/田代深子
あちょっと)
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「釣り人」
白い波がうねり
風がストロボして
まぶたの上をながれていく
皮という皮
その表面だけがしめっている
水波がひっそりとみち
生ぬるい缶ビールと
おなじ水位になったような
軽薄な酔いで
堤防からほうったルアーの
浮きのまわりだけ
しんとして
欲がある
*
ポケットに
女の髪があまっていたので
そいつを釣り糸にして
いどんだのだが
これは釣れるものではない
それでも髪の毛は
毎秒のびつづけ
浮きの呪詛をきくともなく
ひとつづきほうり投げれば
テ
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