アイオンスはないてない/村乃枯草
わたしにきく
「アイオンスはないていたか?」
「いいえ」
看守は他には口をきいたことがない
馬鹿なわたしは二十才になっても
学校を卒業できず
二十八点の国語の答案と
三十二点の算数の答案を
帰り道の川に流す
頭がよく見られたくて
分数のわり算はひっくり返してかける
と言うと
「過半数の人はその理由がわからないのです
から、それは間違ってると答えるのが正解で
す。あなたは大切なことがわかっていません」
と叱られて大切なことはちっともわからない
「アイオンスはないていたか?」
「全然」
それにしても
鳴くの? 泣くの?
アイオンスは今日も自分勝手で
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