私の大好きな哀川さん/瑞海
 
じゃないか、まったく
周りの奴らも溜め息ついて
私と同じ表情をしていたのが
嬉しくて悲しくて悔しい


ある日
私の大好きな哀川さんは
少し寒くなって
辺りがにわかに赤らめてきた頃に
放課後の一番西側の空き教室で
私と話をした
それは哀川さんが
もう長くないという話だった
寿命とかではなく
哀川さん曰く
「私が私でいられるだけの間」
らしい
哀川さんは変わらず哀川さんなのに
と思う私は浅はかである


「極彩色の中で生きているっていう
重みを受け止められるのは今しかないもの
私、あなたをずっと見ていたの
あなたを儚いと思った
重み
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