海になればいい(飽和編)/涙(ルイ)
 
   悲しいほど強く 君を抱きしめたい衝動に駆られたのを
     他のことは何もできないけれど
     強く強く抱きしめたい衝動に駆られたのを
     昨日のことのようによく憶えています

     あの日 あの雨の日 君は傘もささず
     ずぶ濡れでいつまでも 僕の帰りを待っていてくれましたね
     驚いた僕が急いで傘を差し掛けると
     君は躰を小さく震わせながら うつろに淋し気な声で
     小さくつぶやきました
     「一緒に死んでくれますか」と

     疲れていたのです 僕も
     これ以上生きていても 生け恥を晒すだけなんだ

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