チューしてあげる/島中 充
う大きなどよめきがわき上がった。
帰り道、ぼくは、歩きながらすまない事をしたと、初めて後悔した。言い付けられなかったという安ど感が、より一層すまないことをしたと思わせた。うつむきながら、いつもの土塀の下を歩いていた。どうしてケイコは言い付けなかったのだろう。事件の事をお父さんとお母さんに話したら、「言い付けなさい」と言うに決まっている。「そんなずるいやつはひどい目にあわしてやりなさい」と言うに違いない。だれに聞いても「言い付けなさい」と言うだろう。どうしてケイコは言い付けなかったのだろう。言い付けるようなことは、しないほうがいいと、どうして思ったのだろう。あんなずるいぼくをどうして許してやろ
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