夜行ヘリ/やけのはら/茶殻
 
願う


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ある日、卑語すら飛び交う酒の場で私一人が素面のまま友人達と話したのだ。もはや砂浜
の上で首だけ出して息をしている、次の満潮で死ぬだろう、死ぬだろうと、痴れた悪酔い
の場に乱れ厭世を極めていたにも関わらずあの日の大きな津波はついに私を浚うことなく
多くの日常とそこに絡まる幸福と不幸を飲み込んでいったのだ。自惚れをこじらせた露悪
と自己欺瞞を縮れた陰毛に喩えてみたりして、バベルの塔とか砂上の楼閣とか、それでも
揺らぐことなく妄信するに足る霊神はどこか見えないところに実在しているのではないか
と己の爛れた無神論を幾度となく疑う。行商跨る駱駝の何番目の胃袋、赤子が去
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