ばいばい/末下りょう
 
せる、或いはこの手のひらは鏡のなかのあの手のひらなのかもしれなく、ただそうなるとこの手のひらもあの手のひらのように手の甲をあちらに向けていることになり互いがじぶんにばいばいしてそこに不均衡な羽を持つ蝶を真似る二つの手のひらだけが残されてしまう、そうではなくあの子のばいばいのそのほんの少し手前、わずかな外にぼくはいて、ばいばいしているあの子とあの子の映像の背景に属していてこちら側はすべてに焦点が合ったただの平面的な景色としての螺子だったのかもしれない、あの子にとってぼくはあの子の後ろにいる幾人かの人々のそのさらに後ろであの子が少し高い台から幾つかの帽子を避けながら回す映写機のフィルムに付いた小さな傷
[次のページ]
戻る   Point(2)