ばいばい/末下りょう
 
な傷、或いはレンズに付いた傷にすぎないのだろうか、あの子はあの子が投射する平面的なあの子に裂けた眼が貫通され、陥没した傷の端と端の無限の距離を隔てた、あまりにもなめらか過ぎるあの子のばいばいの裏側に抜けながら、あの子の半透明に折り重なる幾つかのあの子のばいばいを見たのだろうか、この向かい合う単純な二平面に開かれた小さな傷の眼それ自体が射影として交錯する、誰もが誰とも目を合わさない、瞬きもなく陥没したその裏側で露出した、見つめ過ぎる裏窓に休む鳥が落とした一枚の羽毛

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