空白の壁の前に立ち、ただひとつを独白するために/北街かな
裏側がえぐれていると奇妙に訴え
言葉の端々に噛みついて口をうごかす
私は何を言いたいのだ
私は何を言うためにここに居る?
ただひとつのことばとは、ただひとつの私のことではなかったか?
空白は宇宙生誕の晴れ上がりからやってきて
地球黎明の重爆撃期に隕石の形で宿命を叩きつけた
音が複雑な意味をもたらしたとき
音素が声帯をあやつりはじめたあのときに
誰かに伝えるために言葉は確かにうまれて
電信電波に憑依してまで
素早すぎる幽霊のように
惑星じゅうを駆け巡ることになったのだ
届けよとの祈りが
空まで達した白紙の壁に衝突し続けている
伝われとの懇願が
地の裏側まで達したディス
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