空白の壁の前に立ち、ただひとつを独白するために/北街かな
 
を書き記すため
空まで空白の壁が達してゆく!
いま このときの心情に与うる限りのすべてを空白に叩きつけるのだ
日本語はそれで満足していたか
私はおそれてひるまなかったか
解釈は手と手を離さなかったか
真意に糸はかかっていたのか
ただしく縫いあわされた唯一を選びとるために宇宙をなんど巡ってしまったのだろう
時計はすべてこわれ
時間は十一次元にねじまがり
余白は未定義に寝込んでいき
残響は波打ちぎわに吸われ
歌は喉に飲み込まれた
声はとっくに渇いてしまい
なんども、何度もひどい咳をする
闇のような血をくちびるから落として
脳が捩れて耳から噴き出し
あたまが痛い目の裏側
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