空白の壁の前に立ち、ただひとつを独白するために/北街かな
てきたのだ
死者が私の顔をして棺に入るときの硬直から急いで戻ってきたのだ
過去はトンネルを通ってまっすぐに
未来はデジタル信号でジグザグを描いて宇宙から
言葉たちが日本語のふりをして行為者と動作とを意味ありげに関連させ
対象物と使用方法とを綿密に深く癒着させて
あるところでは歓喜を
いたるところでは怨嗟を
表層に浮いたところでは同調を
海溝の岩影では途絶を
忘れられた島嶼の一軒屋では愛を
叫び 歌い 放ち 天候を真に受けて 太陽粒子を果てに返して
始原生命が立ちのぼってくるずっと背後から待ち構えたように
私が声を出す直前を見計らい企てた長期的瞬間断絶
正しくこの言葉を書
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