左右非対称/こうだたけみ
 
ている姉さんの右腕の先端に、姉さんの右手としておとなしく収まってしまう。

 諸手を振る。「ばんざい、ばんざい」と集団がうねる。手が、触手さながらにひらひらする中を、自動車は姉さんを乗せて走る。運転席の男は「ずいぶんせいだいなおみおくりだな」と呆れたように言って、傍らの姉さんは「これが当たり前なのよ」とすまなそうに笑ってみせた。いつの間にか女らしい丸みを帯びた身体を、姉さんは居心地悪そうに窓際へずらした。気のせいか、左半身のほうがどの部分も右半身より大きく見える。けれども男からは、小さくまとまった右半身しか見えない。
 姉さんは気休めに、バランスの悪い身体を両手で押さえつけた。本当は歩きたか
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