左右非対称/こうだたけみ
 
たかったが、むしろ皆と手を振る側に居たかったがさすがにそうは言い出さなかった。その代わり、窓の外を眺めるふりをして、はっきり不満げに顔を歪める。周期的苦痛に耐えて生きるより全部終わらせるほうが楽なのに、とその顔には書いてあった。後方では集団が相変わらずの渦を巻いて、左巻きに「ばんざい、ばんざい」と繰り返していた。だんだんと遠退いては、視界の一点に、蟠る。
 あたしは一つ気がついた。あたしは子供だったが、そこには最初から、集団という要素が含まれていた。女である前に子供であるならば、あたしは最初から集団だったのだ。なんだかとても安心する。それは、あたしも同類だということを意味していた。じつは少しも怒る必要などなかったのだ。ひどく損をした気分で、小さく、小さく蹲る。
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