左右非対称/こうだたけみ
 
て、少し戻って止まる。左手は、右手と違ってまったく動こうとしない。あの子と一緒に、とても静かにあたしの残骸のように見えた。
 朝になってあたしの左手は、真っ白な花が詰まった乳母車の中に入れられた。姉さんがそれを左手で押して、いつの間にか寄り集った集団の前に出ていく。手が一斉に振られて、姉さんはにっこりと笑う。乳母車は集団に渡されて、その中心でぐるぐると回されながら、とうとう行ってしまった。
 集団を見送った姉さんは、トントンと音をたてて二階へ上がってきた。それを聞きつけて、あたしは慌ててドアノブを掴もうとする。けれども両手がない。そのままドアが開かれるとあっさり右手になって、あたしは、笑ってい
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