君に触れるということ/竹森
 
たこの手がもうゴキブリに触れられないと思うと言い知れぬ喪失感に襲われます。僕、いや僕らの手にとって、いつの間にかゴキブリは喪われた故郷になっていたのでした。最後のトラックを見送った夜、僕らは泣きながらアルコールを(その夜ばかりは未成年者も)一晩中飲んで明かしました。僕らは僕らのした仕事を誇りに思います。

その夜、
この世界
より
美しい
世界から
増え過ぎた
ナナが
一人に
つき
一人
入荷
され
ました

僕らは
ナナに
それぞれの
服を着せ
それぞれの
名前を
与え
それぞれの
食事を
与え
ました

誰も
不満は
初めから
抱い
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